設立趣旨

 現在70歳以上のろう者(主に手話でコミュニケーションをする聴覚障害者)は、その教育課程において読み書きを十分に習得できなかったり、教育を受けられず、言葉や文字を理解できない方もいます。
 高齢化社会を見据え、将来の高齢ろう者の介護を案じ、平成11年に「ろう者の高齢化問題を考えるための実態調査」を実施。この調査から「意思疎通がスムーズにできる人に介護をしてほしい」との声が多く、これを機にろう者のホームヘルパー育成に取り組みました。平成19年、「富山県高齢ろうあ者に関わる調査」において、富山市在住の60歳以上のろう者を対象に、面談による聞き取り調査を実施。この結果、障害ゆえに情報入手が十分でなかったり、制度や福祉サービスについても理解できていない状況が見えてきました。

 近年、聴覚障害者への配慮ある介護施設が、全国的に増えてきておりますが、富山においては賃金面運営面においても実現するには至っていない状況です。
 富山だからこそできる支援といえば、「とやま型デイサービス」です。介護保険サービスの提供は65歳以上の高齢者が対象ですが、年齢に関わらず聴覚障害者児が集う場を提供。デイサービスでは障害に配慮した設備、個々の特性やコミュニケーション手段に理解のある職員を配置します。また、作業所を設け、軽度の作業を提供することにより、能力や機能の保持、向上を目指すとともに、集える場としての機能を持たせ、不足しがちな情報の補完の一助となります。聴覚障害児にとっては、同じ障害を持つ人たちと世代を超えて交流をもつことで、アイデンティティの確立や将来へのロールモデルとなりうるでしょう。ろう者が手話で話す姿を見たり接することで、地域住民の方に手話や聴覚障害についての理解が広まることも期待されます。
 日頃から地域社会において、近隣の方々との関わりも薄く、コミュニケーションをとることもできずに孤立している状況が軽減され、手話で自由にコミュニケーションできる場があることで、心のやすらぎが得られ、それが生きるよろこびにもつながると確信しています。

 「大きな手小さな手」では、自由に手話で会話できる空間、それぞれの聴覚障害に合わせた方法で、コミュニケーションを楽しんでいただきたい、誇りと生きがいを持って暮らしていただきたい、その実現のために事業を展開していきます。

代表理事 金川 宏美